機動戦士ガンダム ~影と光の挟間で~

もしガルマが生きていたらというガンダムの二次創作小説です。

第1章ー真実の発覚

宇宙の無限の闇、

シャア・アズナブルが駆る赤いMS(モビルスーツ)、ザクⅡS型が、

敵の艦隊を翻弄していた。

彼の動きは鋭く、赤い彗星と呼ばれるゆえんが垣間見える。

 

彼の側を飛ぶ青いMSはガルマ・ザビが駆るザクⅡFS型だ。

ガルマはシャアを尊敬し、友情を感じていた。

彼らはまるで宇宙の闇を照らす明星のように、敵を次々と撃破していった。

 

しかし、この戦いでのシャアの動きにはいつもと違うものがあった。

彼の攻撃は鋭さを欠き、迷いが見え隠れしていた。

ガルマはシャアの動きに一瞬のためらいのようなものを感じた。

ガルマは通信で声をかける。

 

「シャア、どうした、大丈夫か?」

シャアは一瞬の沈黙を経て言葉を返す。

「…大丈夫だ、ガルマ」

 

しかし、その言葉からは自信が感じられなかった。

戦闘が続く中、シャアは一度、自身の機体を停止させる。

無数の星々が、赤い一つ目の巨人を見下ろしているかのように輝いていた。

 

彼の心は、過去と現在、友情と復讐、愛と憎悪が交錯する嵐の中にあった。

そして妹のアルテイシアの姿が瞼の裏に浮かんだ瞬間、

一筋のビームが赤いザクの左肩を貫いた。

 

「なに!戦艦の主砲・・!?いや、連邦のモビルスーツか・・!」

 

そして二射目の閃光!!

「ちぃっ!!」

即座に回避するシャア。

「当たらなければどうということはない・・・」

モニターに映る敵・白いMSから三射目の閃光が来る!

またしても回避するシャア。

しかし白いMSの機動性とパワーに、

シャアは得体の知れないプレッシャーを感じた。

 

「邪魔をするなぁ!!」

シャアはコクピットの中で絶叫していた。

ザビ家への復讐を邪魔するものは誰であろうと赦さない。

そんな怒りが通じたかのように赤いザクは左足を白いMSの腹部に蹴り込んでいた。

連邦の白いMSが吹き飛んだその隙に、

ガルマはシャアを助けるべく接近した。

「シャア!退くんだ!」

 

そして白いMSから4射目の閃光・・・!!

シャアのザクは間一髪でビームを回避したが、

ジリジリ・・と、ビームから飛び散った粒子がザクの装甲を微かに焦がす。

「連邦のモビルスーツは化け物か!」

5射目、6射目。

左腕を失った赤いザクは、シャアの巧みな操縦テクニックにより回避運動を続けた。

MSの性能の差が、戦力の決定的な差では無いことをシャアは理解していた。

しかし…連邦のMSから感じるプレッシャーをシャアは無視できなかった。

 

「シャア!下がれ!」

ガルマはシャアを助けるべく、白いMSと戦った。

彼の青いMSは、連邦の新型MSに圧倒されながらも、

シャアを守り抜こうと奮戦していた。

 

シャアはガルマの奮闘に助けられ、辛くも母艦ファルメルに帰還することができた。

彼らは、今までにない重々しい空気に包まれる。

 

「シャア、お前、何があった?今日はいつものお前らしくなかった」

その問いかけにシャアは答えることができなかった。

その瞳には、言葉にできない深い闇と痛みが浮かんでいた。

 

ガルマはシャアを部屋に連れていき、彼に真実を語るように迫った。

「ガルマ…」

シャアは言葉を探る。

彼の心にはガルマ・ザビという友に、

自らの持つ恐ろしい秘密を告げる勇気がなかった。

しかし、ガルマは待っていた。

彼はシャアの言葉を待ち、その沈黙を静かに受け入れていた。

シャアは深呼吸を一つ。そして、ついに口を開く。

「ガルマ…私には君に言えなかったことがある。」

その言葉に、ガルマの目が硬くなった。

シャアは彼の視線を受け止めながら言葉を紡ぐ。

「私の本当の名前は、キャスバル・レム・ダイクンだ。」

ガルマの顔が青ざめていく。

 

キャスバル・レム・ダイクン、その名前はジオン公国ではタブーとされており、

ザビ家に仇なす名前であった。だが、シャアは止まらなかった。

「ザビ家は、私の父ジオン・ズム・ダイクンを裏切り暗殺した、

その復讐の為に私はシャア・アズナブルと名を変え生きている。」

 

言葉が終わると、部屋に重苦しい沈黙が降り立った。

ガルマの瞳は、衝撃と怒り、そしてシャアの裏切りを感じ揺れ動いていた。

 

だが、シャアはその視線を受け止め、自分のすべてをガルマに晒す決意をした。

この時シャアは復讐の相手であるはずのガルマに、

友情以上の何かを感じていたのかもしれない。

 

シャアはガルマの瞳を真っすぐに見つめ、これまでの自分の歩みと、

ザビ家への憎しみ、そして、ガルマとの友情に至るまでの道のりを語り始めた。

 

ガルマは言葉も無く、シャアの告白を聞いていた。

それは、彼の中で多くの葛藤を呼び起こす時間だった。

 

シャアの告白は、ガルマの心をかき乱した。

ザビ家の名、権力と名誉、それに絡み合う栄光と野望。

それらが彼の心を突き刺し、苦悩へと誘った。

 

シャアは、ガルマの揺れ動く心情をじっと見つめていた。

彼の中でも、友情と復讐、愛と憎悪が入り組み渦巻いていた。

 

「なぜ、今まで言わなかったんだ、シャア?」

ガルマの声は、悲しみと怒りで震えていた。

しかし、シャアは静かに確かな声で応えた。

「君と共に戦い、時を重ねていくにつれて、真実を伝えるのが怖くなった、

そしてガルマ、君を失いたくないと思うようになった。」

 

その言葉は、ガルマの心に深く響いた。

彼は、シャアの瞳に映る自身の姿をじっと見つめた。

そこには、怒りや裏切り、野望や憎悪ではない、

士官学校時代から、苦楽を共にした二人の純粋な友情の光が輝いていた。

 

室内に沈黙が流れる。

その間も、ガルマとシャアの視線は交わり、

その強い絆が、二人の間に静かな力を生み出していた。

 

「シャア…私は…どうすればいい?」

 

ガルマの問いかけに、シャアは答えなかった。

彼らの未来は、もはや一筋縄でいくものではない。

ザビ家への復讐と、ガルマとの友情。

その間で揺れ動くシャアの心は、答えを見つけられずにいた。

 

戦闘が一段落したファルメルは、静かに宇宙を漂っていた。

星々の光が艦内に差し込み、シャアとガルマを照らし出していた。

彼らの影は、その光に照らし出され、一つに溶け合っていた。

それは、未だ彼らが共に一つの未来を見据え、

一つの絆で結ばれていることの象徴だった。

だが、それと同時に、彼らを待ち受ける未知の困難と葛藤も、

その影の中で、じっと彼らを見つめていた。

 

ガルマは、シャアの告白を受け入れ、

二人の新たな関係を築くために立ち上がった。

彼の心は、まだ揺れ動いていたが、

それでもシャアと共に前に進む覚悟を固めていた。

 

シャアもまた、ガルマとの友情と、

ザビ家への復讐という相反する感情に揺れながら、

ガルマの手を取った。

 

二人の前に広がる未来は未知だらけだった。

しかしそれでも、彼らは共にその未来への一歩を踏み出した。

影と光が入り混じる中、

シャア・アズナブルガルマ・ザビの物語が、

その先へと紡がれていく。