ファルメルの艦橋は戦闘の余韻と緊張感で満ちていた。
ガルマは連邦軍との戦闘を通じてシャアの戦闘技術の高さを再確認した。
彼自身は、艦の指揮を執っていた。
ガルマの心はシャアとの友情と、
彼がもたらす危険との間で揺れ動いていた。
数時間前、とある情報がファルメルに届いた。
それは連邦軍の白い新型モビルスーツ、「ガンダム」に関するものだった。
その情報は諜報部から提供され、シャアは初めてガンダムという名前を目にした。
「ガンダム…」
シャアの心には、ガンダムの印象が深く刻まれ、
その存在が彼にとって脅威となっていた。
ガンダムは、彼がこれまでに経験したことのない強敵であり、
その名前には不気味な響きを感じた。
そして木馬のようなシルエットをしたガンダムの母艦が、
「ホワイトベース」という名であることも知った。
シャアにとってガンダムと木馬は大きな壁となる存在であった。
宇宙の無限の闇が、
その闇の中で、指揮官のガルマ・ザビは、
モニターに映った連邦軍の戦艦「ホワイトベース」をじっと見つめていた。
その艦には、ジオン公国の威信を脅かす、白いMS「ガンダム」が搭載されている。
シャアはそれを「木馬」と称していた。
木馬は、古の戦いで巨城を築いた敵を撃退した神話の馬である。
それと同じようにガンダムもまた、
ジオンの巨城を打ち破る力を持っているかもしれなかった。
ガルマは思索にふける。
彼の心は複雑だった。
シャアの正体と目的、それを巡る不穏な気流が彼の心を揺さぶり続けていた。
ガルマはシャアを信じ、彼の才能をジオン公国のために活かしたかった。
だが、シャアの目には何か他のもの、遠くを見据える眼差しがあった。
ファルメルの任務は木馬の追跡だった。
その中で、シャアとガルマの関係が、彼らの未来を定めていく。
「ガルマ、木馬が移動した。我々は追跡を続けるべきだ。」
シャアの冷静な声が、ガルマの心に突き刺さる。
連邦の技術力は、ジオンにとって未知の脅威であった。
ガンダムの存在は、それを象徴していた。
ジオンの優れたモビルスーツ技術を、
ガンダムの性能は凌駕していた。
シャアのザクⅡS型は、その機動力で何度もガンダムと交戦した。
だが、そのたびに彼はガンダムの強靭な防御力と性能の前に退けられていた。
ガルマはシャアの戦いを見て、彼の勇気と技量に敬意を抱いていた。
だが、同時にシャアに対する不信感もまた、彼の心に芽生えていた。
木馬は、ファルメルの追跡を逃れながらも、なにか目的をもって航行しているように見えた。
その動きは、ただ逃げるだけのものではなかった。
「木馬はどこに向かっている?奴らの目的はなんだ?」
ガルマの問いかけにシャアは静かに答えた。
「それを知るためには、もっと彼らに近づく必要があるな、ガルマ。
私はいつでも出撃できる。」
シャアの言葉にガルマは深く頷いた。
彼の中でシャアとの関係が新たな方向に動き始めていた。
ファルメルは木馬を追跡し続ける。
その中で、赤いザクとガンダムの戦いが続いていた。
「さらにできるようになったな!ガンダム!!」
シャアは、まだ見ぬガンダムのパイロットの成長を肌で感じていた。
それは、彼にとって脅威であると同時に、戦士としての刺激でもあった。
シャアの放った弾丸を難なく回避するガンダムが、頭部からバルカン砲を放つ。
かろうじて上方向に回避するシャア。
しかしガンダムはビームサーベルを右手に解放しながら迫ってくる。
斬!!
スラスター全開、シャアはまたも回避には成功したが、
ガンダムのビームサーベルから飛び散った粒子がザクの装甲をかすかに焦がす。
「ええい!!」
シャアはザクの拳を、ガンダムの脇腹に叩きつける。
ブン!
ガンダムの複眼が光を放ち、再び頭部からバルカンを放つ。
「これほど私を追い詰めるパイロットとは一体何者なんだ!?」
それは宇宙に進出した人類の革新。
かつて父ジオン・ズム・ダイクンが提唱した概念がシャアの脳裏をよぎった。
この戦いの中で、シャアはガンダムのパイロットとの運命的な繋がりを感じていた。
彼はそのパイロットの存在が、自身の復讐と運命に深く関与してくる予感を感じた。
戦いが進む中、ガンダムはシャアのザクを圧倒し始めていた。
ガンダムのパイロットの能力がシャアを超え始めているようだった。
「シャア、撤退だ!ただちに帰艦しろ。」
ガルマの冷静な命令が、シャアの耳に響いた。
シャアは撤退し、ファルメルに帰艦した。
彼の目には、戦いと未来、ガルマとの関係に対する新たな決意が浮かんでいた。
ガルマはシャアの戦いを通じて、彼の秘められた感情と闘志を理解し始めていた。
シャアはジオン公国の英雄であり、同時にザビ家に仇なす存在でもあった。
木馬の追跡は、シャアとガルマの心の追跡でもあった。
二人の間には、未だ言葉にならない秘密と感情が渦巻いていた。
シャアとガルマの秘められた感情もまた、戦いの中で形を変えていくのか。
未来は未知であり、その未知の中で、星々が二人を静かに見下ろしていた。